本研究は、慢性状態にある思春期の子どもと親が相互作用を通して、どのように病みの軌跡を辿っているのかという、彼らの軌跡のあり様を説明できるモデルの構築を目的としている。本研究は、研究者の博士論文の研究結果を発展させるものであり、思春期の子どもの対象疾患を1型糖尿病、先天性心疾患に腎臓病を加え、発症時期をも拡大した理論的サンプリングにより、面接調査を実施する予定である。この計画に向けて、慢性疾患をもつ子どもや親に関する研究論文や手記から知見を得るとともに、慢性疾患をもつ思春期の子どもや家族が参加する勉強会やキャンプに参加した。そこで、思春期の子どもや思春期に向かっていく子ども、さらには思春期から青年期に至った子どもとの対話から、自分の病気を捉えること・捉えていくこととは、生活の中心は学校の場となるけれども、家族(親)生活を送る中で必要とされる治療や療養法をどのように日常生活の中で取り組んでいくのか、その際の困りごとや問題だと感じたことに対処する術を得ていく試みを行っていることが明らかになった。また、親を思う気持ちが変化していく時期が思春期であると語られていたことより、慢性状態を親も辿っているという意識が子どもの中でどのように捉えられていくのかという視点をインタビューガイドに反映させる示唆を得た。また、子どもや家族に関する学術集会や生命倫理に関する学術集会への参加も積極的に行い、子どもや家族看護の専門家である大学教員や看護学ではない他領域の専門家との意見交換も多く持つ機会を得た。その中で、慢性状態を辿る思春期の子どもと親への具体的な介入方法に対する方略は未だ明らかになっていないために、ケースを越えた援助を必要としている子どもと親の実践への方略を見出しにくい現状が明らかになった。したがって、本調査にむけて現在、倫理審査委員会への書類を整え、プレテストを実施している。
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