本研究は、慢性状態にある思春期の子どもと親が相互作用を通して、どのように病みの軌跡を辿っているのかという、彼らの軌跡のあり様を説明できるモデルの構築を目的とした。本研究は、研究者の博士論文の研究結果を発展させたものであり、対象疾患を1型糖尿病と先天性心疾患に腎臓病も加え、発症時期をも拡大した理論的サンプリングにより面接調査を実施した。この調査と並行して、小児を取り巻く医学系学会や患者会・家族会が主催するセミナー等にも参加し、慢性状態にある思春期の子どもと親に関する新たな知見の獲得に努めた。面接調査では、対象者が思春期の子どもであるため、学校生活の妨げにならない時期を調整しながら面接時期や依頼を行った。しかし、面接時期は夏休みや冬休みの希望が多く、研究依頼時から面接調査までに多くの時間が必要となったことからも、協力の得られた親子が少なかったため、施設依頼数を拡大し対象者数の増加を試みた。 その結果、協力の得られた対象者は8ケースであり、1型糖尿病をもつ思春期の子どもと親が2組、先天性心疾患をもつ思春期の子どもと親が3組、腎疾患をもつ思春期の子どもと親が3組であった。8組のうち、両親と子どもの3名が1組、父親と子どもが1組、母親と子どもが6組であった。各ケース毎の親子それぞれのデータを整理したうえで親子の理解を深め、疾患毎にケースを超えた分析を行った。その後、疾患を超えたケースの分析を行い、カテゴリー間の洗練化を図っている。今回、新たに腎疾患を対象疾患に加えたが、腎移植を受けたケースはなく、移植後のライフスタイルの変化という問題に直面する親子の軌跡を探求することはできなかった。しかし、心疾患と1型糖尿病だけでなく、腎疾患を持つ思春期の子どもと親にも共通する捻れの現象は存在すること、その乗り越え方に共通点があること、さらに、腎移植を射程に入れた将来を生きる親子の特徴も見えつつある。
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