本研究の目的は助産師のワークラバランス(以下WLB)を高めるために欠かせない多様な働き方の実現に向けて現状を様々な角度より明らかにし、助産師、ケアを受ける対象者、雇用側にとっても評価される多様な働き方のモデルを提案することにある。3年計画の初年度は看護界に限らずWLBの取り組みについて視野を広げて文献検討を実施した。さらにWLBを推奨し実施している助産師の管理者にも専門的な立場から意見を伺った。これらから見えてきたことは、制度の整備だけではなく、雇用する側が取り組むことによって得られる利点(優秀な人材の確保やモチベーションの向上、長期的な労働力の確保など)の理解が不可欠であること、仕事と生活の調和を図って働き続けることに価値を見なすことを積極的に発信していくことなどであった。さらに、上司もしくは適当な立場の人間が、制度を利用する際に生じる不安や迷いを汲みとり精神的にも支えていく必要があることや、導入後も取り組みを評価・修正を重ねていくことの重要性が見えてきた。助産師の離職を減少させ、経験豊富な助産師が自分の業務に責任をもちWLBを図りながら仕事を継続させることは、正常分娩を担う助産師数を確保でき産科を取り巻く様々な問題の解決につながる。妊産婦たちから評価されているのは助産師による継続的な質の高いケアであり、実践のためにはキャリアを積んだ助産師の定着・活用が必要となる。また、就業を続けていく上でその仕事に対するやりがいが必要であり、それらは個人のもつ能力を活かしていくことと密接につながる。現在も分析を継続しておりこれらを次年度の計画にも反映させていく予定である。
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