研究概要 |
平成23年4月、小児看護を実践する看護師が直感的に転倒・転落の危険があると判断する小児の特徴を、デルファイ法を用いて調査した。その結果、小児の転倒の危険因子34項目と転落の危険因子34項目を明らかにし、小児用の転倒・転落リスクアセスメントツールを作成した。さらに、(1)小児と家族へのDVDとパンフレットを用いた転倒・転落防止の説明(2)小児用転倒・転落リスクアセスメントツールC-FRAT(乳児用、幼児用、学童用)の使用(3)リスクに対応した転倒・転落防止対策の実施、の3項目から構成される転倒・転落防止プログラム第1版を作成した。 平成23年8月から24年2月まで、小児専門病院の5病棟と総合病院の小児病棟1病棟で、転倒・転落防止プログラムの第1版の実施調査を行った。調査期間中に入院した1804名のうち、調査に同意を得た患者190名(10.5%)を対象に実施した。アセスメントツールの妥当性として感度、特異度を算出した。幼児用のアセスメントツールでは感度、特異度が50%、77%、カットオフポイントの修正後では81%、56%、AUC(ROC曲線下面積)は0.72であった。学童用では感度、特異度が11%、91%、カットオフポイント修正後では89%、47%、AUCは0.71であった。調査期間中に調査対象となった乳児は転倒・転落および、転倒・転落の危険がなかったため、乳児用アセスメントツールの妥当性の検証はできなかった。幼児用のアセスメントツールでは12項目の危険因子、学童用では9項目の危険因子が転倒・転落と有意な関連がみられた。転倒・転落防止プログラムのアウトカムである転倒・転落率は、前年度1.83(単位は1,000患者日)に対して、調査期間中は1.97であり変化はなかった。
|