【研究目的】訪問看護ステーションの需給を検討する上では、訪問看護ステーションを観察単位とした個レベルだけでなく、地域レベルの要因の両者を踏まえた検討が必要である。本研究では、訪問看護ステーションの看護職員常勤換算1人あたりの利用者数に関連する要因をマルチレベル分析により明らかにすることを目的とした。1年目である平成23年度は、訪問看護サービスを提供している事業所に関する公表データ(個票)を収集し、疫学的分析が可能な形式に加工した全国調査による訪問看護事業所データベースを作成することとした。【方法】各都道府県がホームページ上で公表している「介護サービス情報公表システム」で公表されている情報をソースとし、「訪問看護」を提供している各事業所の介護サービス情報の「基本情報」および「調査情報」を収集し、訪問看護事業所データベースを構築した。事業所の所在地から都道府県、市町村を抽出し、それぞれ識別番号を付与し、都道府県等の地域レベルの統計データと結合できるようにした。本データベースを用いた分析の実現可能性を検討すべく、茨城県の平成21年度データを用い、サービス提供体制強化加算の施設基準届出の関連要因について検討した。【結果・考察】収集できた訪問看護事業所数は47都道府県合計7321事業所をデータベース化した。鳥取県のみ独自のインターフェイスを用いて情報を公表していたが、データ項目は他の都道府県とほぼ同じであった。本研究の分析の従属変数である看護職員常勤換算1人あたりの利用者数は、指定訪問看護事業所の「従業者の数および勤務形態」、介護サービスの利用者への提供実績の「利用者数」から算出可能であることが確認された(介護保険に限定)。しかし、平成22年度に公表情報が更新されたことにより、平成22年度と平成21年度の2種の様式が混在していることが明らかになった。22年度様式で公表している場合、前年度の情報は公表されていないため、調査年度を平成21年度で統一することは困難である。そのため、調査年の影響をコントロールした分析が必要である。
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