研究概要 |
本研究の目的は、「認知症高齢者のためのおだやかスケール」を開発し、その使用の可能性を検討することである。本年度は、ケア提供者から見る認知症高齢者のおだやかさの程度の印象とおだやかスケールの得点からその関連性を明らかにした。高齢者ケア施設を利用する認知症高齢者86名を対象とし、基本属性として、CDRは2が約40%、要介護度3が約30%と最も多かった。ケア提供者である施設のスタッフは介護職が98%で、認知症に関わる看護・介護平均経験年数は7.2±4.2年であった。本スケールは【周囲との交流】、【自分らしさの発揮】、【満足・活気】の3領域20項目からなり、各項目を4件法(当てはまる,ややあてはまる,あまり当てはまらない,当てはまらない)で評価する。また、対象者の全体的なおだやかさの程度については、3件法(高い,中程度,低い)で評価する。対象者の全体的なおだやかさの印象の得点と本スケールの総得点の相関については、その相関係数は0.759(p<0.01)で強い相関がみられた。また、本スケールの各評価項目の完全一致率は35%から56%であり、完全一致率が低い項目を中心に表現方法などの変更を行った。変更により一致率が高くなった評価項目としては、「出来ることに達成感、満足感を持っている」から「笑顔で喜びを示す」への表現変更であり、37%から56%となった。これは、評価者からみてより評価しやすい表現へ変更したことも影響していると考えた。今後の課題としては、各質問項目の評価段階に対して、具体的な評価基準などを付け加えるなどして、どの評価者でも、同じように、明確な評価ができるように提示することで、評価者間一致率が高くなることを期待できると考える。
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