研究概要 |
筆者らが開発した20項目の認知症高齢者のおだやかスケール(以下改訂版OS)において、評価者による対象者のおだやかさの全体的印象評価と改訂版OSの総得点の関連を検討することを目的とする。高齢者ケア施設を利用している認知症高齢者86名を対象とした。評価者である施設のスタッフが対象者の日常生活の様子を20項目の改訂版OSを用いて4件法で調査するとともに、対象者のおだやかさの印象について、「高い」,「中程度」,「低い」の3件法で評価した。解析には、統計パッケージSPSS16.OJを使用した。倫理的配慮としては、氏名はコード化し、施設責任者が台帳に記載,管理することで、研究者に対象者の情報が直接的にわからないように配慮した。施設長の同意と署名を得た後、施設に研究の情報公開文書を掲示し、対象者の家族には研究説明文書を送付した。所属疫学研究倫理委員会(受付番号22-5)にて承認を得た。対象者の平均年齢は85.2±7.0歳、アルツハイマー型が最も多く約6割、要介護度は要介護3が最も多く約3割を占め、CDRは中等度であるレベル2が約4割を占めた。評価者は計42名で、介護士が全体の98%を占めた。認知症に関わる看護・介護平均経験年数は7.2±4.2年であった。評価者によるおだやかさの程度の印象と改訂版OSの総得点の相関係数は-0.759(p<0.01)で強い相関であった。改訂版OSは、因子分析により、「周囲との交流(6項目)」、「自分らしさの発揮(8項目)」、「充実した暮らしぶり(6項目)」の3領域のカテゴリーに分類された。評価者によるおだやかさの程度の印象と改訂版OSの総得点は強い相関があり、認知症高齢者のおだやかさを評価するスケールとして改訂版OSは妥当であると考える。
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