本研究は、身体的な脆弱性により反応が乏しいように見える高齢者の主体的ケアニーズをくみ取るためのかかわりを看護師自身が評価するための自己評価指標を開発することを最終目的として、高齢者の主体的なケアニーズをくみ取るための看護実践の評価の視点とケアの指標を明らかにすることを目的として実施した。 研究協力者は、高齢者ケアの質の向上・維持に力を入れている病院に勤務し、“反応の乏しいように見える高齢者”に実際に援助を提供している看護師であり、所属する組織の看護管理者から、高齢者やその家族を尊重した看護実践ができるとして推薦された者で、A県内の介護療養型医療施設に所属する3名の看護師だった。看護師経験年数は平均7.3年、男性1名、女性2名、インタビューの時間は平均56分だった。データ収集の方法は個別インタビュー調査で、分析方法は質的帰納的な方法だった。。 その結果、高齢者の主体的なケアニーズをくみ取るための看護実践の評価の視点として、【前提となる要因】、【看護師の主体としてのあり方】、【看護師が目指している方向】、【実践の成果】の4つのカテゴリーが示された。また、高齢者の主体的なケアニーズをくみ取るためのケアの指標として、【看護師の主観を活用する】、【他者がとらえている高齢者像を活用する】、【高齢者の“普通”や“日常”を基盤とする】、【ケースを振り返って判断する】、【一歩踏み込んで試す】、【目に見える成果ではなく自分に何ができたかでみる】、【急がず焦らず長期的な視点でみる】、【いつもの状態を基準にしてみる】、【その時々で判断する】の9のカテゴリーが示された。 明らかになったケアの指標を活用しながら看護実践を行い、評価の視点を用いて実践を振り返ることにより、身体的な脆弱性を有する高齢者の主体的なケアニーズに即した看護実践が可能になり、老年看護の質の向上に貢献できると考える。
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