研究概要 |
本研究では,予防行動実行の動機付け支援としての糖尿病遺伝カウンセリングと, 生活習慣改善支援補助ソフトウェア(LISS-DP)を用いた糖尿病療養指導士による非対面式の個別生活指導による複合的予防介入の効果を検討する3群並行ランダム化比較試験を実施した.ランダム割り付けの対象となった適格者(糖尿病家族歴のある健康成人)216名のうち,主要効果指標である食事摂取カロリー,身体活動量の測定を1年後のフォローアップ調査まで完遂したのは144名であった.LISS-DPによる個別生活指導を受けた群は,介入期間が終了した6か月時点において,食事摂取カロリーが対照群と比較して有意に大きく低下した.しかし,1年後にはその差は消失し,個別生活指導を継続することの重要性が示唆された.臨床における介入の継続的実施については,半自動化プログラムであるLISS-DPはがコスト面で有効であり,今後の活用が期待できる. 一方,遺伝カウンセリングとLISS-DPの複合介入群では,LISS-DPによる単介入群と比較して,ベースラインから1年経過した後において食事摂取カロリーが有意に低下していた.本研究における遺伝カウンセリングは,予防行動に対する動機づけ支援を目的として実施されたものであり,疾患の可変性に関する認識を変化させることに成功している.このことが,個別生活指導を受けた際に,対象が実際に行動変容を実施・継続することを促進したことが推察される.しかしながら,運動習慣についてはいずれの介入も効果が見られず,運動習慣改善についてはさらなる方策の検討が必要である. 本研究より,生活習慣改善の動機づけ支援を目的とした糖尿病に関する遺伝カウンセリングは,食事に関する行動変容の実施・継続を促進しうることが示された.本研究結果を,他の生活習慣病予防においても応用できうるかを検討する事が次なる課題である.
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