本研究は、入院期間中における高齢配偶者の代理意思決定の特徴を医療面や生活面から明らかにするものである。これにより、高齢配偶者は、無理のない範囲で後悔しない、その段階で最も適切だと思える意思決定を心理的安定のもとに行うことができる。また、看護師は、今まで家族のみで対応してきた代理意思決定過程に適切な時期に介入する方策を見出すことができると考えている。 本年度は、研究参加者5名のインタビューデータをHsieh & Shannon(2005)のDirected content analysisによって質的内容分析を行なった。研究参加者と患者の概要では、研究参加者5名(男性1名、女性4名)は、60~80歳であった。患者5名は60~75歳であり、全員が脳出血で、うち3名が手術を受けていた。脳血管疾患患者の高齢配偶者が入院中に行なう代理意思決定の構成要素は、[代理意思決定の認識]、[意思決定のためのリソース]、[意思決定への影響要因]、[代理意思決定全体の評価]の4つに分類された。特に、代理意思決定の認識では、手術、転院(退院)、医療処置、生活全体の4場面に大別され、手術場面では、【決断を下すのは自分しかいない】という積極的な認識であった。転院(退院)場面では、【折り合いをつけながら、最終的に決断するのは自分】という能動的な認識であった。しかし、医療処置場面では、医師からの説明後同意書にサインするのが当たり前という雰囲気の中で、【自らの判断で選択する余地がない】という受け身的な認識であった。また、生活全体の場面では、代理意思決定の認識は薄く、長年夫婦として暮らしてきた中で、【無我夢中で配偶者として当然のことを行う】という曖昧な認識であった。
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