【目的】認知症高齢者のエンドオブライフ・ケア充実に向けた、入所高齢者の家族に対する看護師のケア実践能力育成に関する基礎的資料を得るために、家族と看護師の認識および看護師の家族ケア実施状況を把握する。 【方法】中部地方の介護老人保健施設(以下、老健)のうち、調査研究に協力が得られた施設に入所する認知症高齢者の家族と勤務する看護師を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施した。 【倫理的配慮】浜松医科大学「医の倫理委員会」の承認を得て実施した。調査対象者には研究の主旨・方法等を明記し、自由意思による参加の同意を得た。 【結果】中部地方にある老健100ヶ所の調査協力を得て質問紙調査を実施し、家族594名、看護師647名から回答を得た。「家族は看護の対象である」と半数以上の看護師が回答した。看護師の認識に比べ、介護が負担だと思う家族の割合は有意に多かった。「今後の見通しや家族の心構え」「治療や看取りなどの意思決定」への看護支援を希望した家族は有効回答者の9割に及ぶが、実施している看護師は7割程度であった。「ケアに一緒に参加できる機会の設定」を7割の家族が希望したのに対し、実施している看護師は4割程度と有意に少なかった。老健での看取りを希望する家族は6割にも及び、また看護師も6割以上が高齢者本人や家族の希望があれば施設で看取りたいと考えていた。しかし、看取り経験の少ない者や家族ケア・終末期ケアに自信がなくストレスを感じると回答した看護師も少なくなかった。 【考察】家族に比べて看護師は施設入所後の介護負担の認識が低いため、入所後の家族ケアが重要視されていない可能性が示唆された。また、ケアへの参加機会の設定など家族のケアニーズに応えるためには、家族ケアも包含したエンドオブライフ・ケア実践能力の充実が老健で働く看護師にとって課題であることが明らかになった。
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