在日コリアン高齢者は日本人高齢者と比べ、社会的にも、経済的にも問題が多く、主観的健康観が低い、抑うつの割合が高い、独居の割合が高いなどハイリスク高齢者となりやすい傾向にあることが示され始めている。しかしながら、その研究は進んでおらず、また研究も限定した地域でのみ行われており、その他の地域では、あまり進んでいないのが現状である、本研究の目的は、質的な研究方法を用いながら、看護学、社会学の視点から、在日コリアン高齢者の抑うつを促進する因子について検討することを目的としている。本年はまず、在日コリアン高齢者の抑うつにかんする、重要な研究が新たに刊行されてきているため、先行研究の検討を行い、その知見と問題点を整理した。それらを踏まえ、本研究の調査項目を検討することを行った。その結果、在日コリアン高齢者の抑うつの要因として、無年金などの社会経済的問題、生活習慣病の罹患の程度が大きいこと、識字利率の低さなどの要因が指摘されているが、ソーシャルネットワーク評価については、十分に解明されていないため、ソーシャルネットワークの評価が高い在日コリアン高齢者を対象として、調査をする必要があることが明らかとなった。そこで、これを踏まえて、在日コリアン高齢者および日本人高齢者の調査対象者に、さまざまな方法で調査への参加を試みたが、調査対象者の収集が予定の通りに進まなかったため、調査対象者の収集と同時に在日コリアン高齢者を対象とした、施設でのフィールドワークを行った。その結果、ソーシャルネットワークが正常に機能することが在日コリアン高齢者の健康維持に有効な行動を選択させているという可能性が示唆された。これらの研究で得られた成果の一部を、今後開催される学会での発表を予定している。
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