本年度は,看取りケアを実践している介護老人保健施設(以下,老健とする)3施設において,実際の事例に沿って,どのような職種がどのようにかかわっているのかを検討した。その結果,老健における看取りでは,以下のことが明らかになった。 1.看取り時期ではないかと検討を開始するのは,主として食事摂取量の減少や活動量の減少がみてとれた時であることが明らかになった。ただし,高齢者の終末期の判断は定義がなく曖昧なため,「看取り時期」を特別なもの,と考えるのではなく,「日々の生活の中で徐々に低下している」と捉えて,ケアを実施していくという考え方をしていた。一方で,1施設では,看取り時期ではないかという検討開始後2週間の食事摂取状況と栄養状態を把握し,「状況が回復しない場合に看取りと判断する」という独自の基準を設けていた。2.看護職者が介護職者をサポートしながらケアをすすめていた。特に,入浴の判断,経口摂取の判断,起居が可能かどうかの判断等,高齢者に変化が起きると予測される場合に介護職者は看護職者に相談を行っている様子が窺えた。また,臨死期には,バイタル測定の間隔や測定方法等についても相談していた。看取りケアに携わることに恐怖を感じている介護職者は多く,最期まで自信をもってかかわれるよう,看護職者のサポートは重要であることが窺えた。3.栄養職者と協力し,経口から食べられるものをできる限り摂れるよう工夫をしていた。家族にも協力を依頼していた。4.入所者とその家族に対して多職種でかかわっていた。ただし,リハ職者や相談職者によるかかわりは少ないことが明らかになった。5.入所者は特に身体状況に苦痛がある場合は,淋しさを訴えられる場合が多くあることが窺えた。 現在,上記の結果と1次調査(質問紙調査)で得られた結果を合わせ,老健の看取りにおけるケアの様相を図で示すことを行っている。
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