研究概要 |
A町に在住する65歳以上の高齢者の内、調査協力の得られた3892名についての過去1年間の転倒経験(以下、転倒経験)および、転倒経験者の身体的、心理的、社会的特性を検討した。 その結果、32.5%の高齢者が過去1年間に転倒を経験していた。年代が上がるにつれて転倒経験者の割合は増加していた(60代21.6%、70代31.7%、80代46.5%、90代45.1%,p<0.001)。性別では女性の方が男性より有意に転倒経験者割合が高かった(男性29.6%、女性34.4%,p<0.05)。 転倒経験者の割合が有意に高い高齢者の特性として以下の項目が明らかになった。有意確率1% 1)身体的状況:日常生活での介護・介助が必要、階段昇り、椅子からの立ち上がり、15分の歩行継続が出来ない、杖歩行、治療中の病気・又は病気の後遺症(高血圧、脳卒中、心臓病、糖尿病、呼吸器疾患、腎臓・前立腺疾患、筋骨格系疾患、外傷、うつ病、認知症、眼疾患、耳疾患)、複数薬剤の服用、口腔機能低下(硬いものが食べにくい、水分摂取時のむせ、義歯の使用)、認知機能低下(物忘れ、日付がわからない)、排泄の失敗 2)心理的状況:転倒恐怖感、生活への充実感の喪失、理由のない疲労感、外出を控えているなど 3)社会的状況:一人暮らし、経済的困難感、友人との交流がない、趣味がない、生きがいがない、地域活動への不参加 転倒のハイリスク群である過去1年間に転倒経験のある高齢者の身体的、心理的、社会的特性について具体的な特性が明らかとなった。地域における在宅高齢者の転倒予防の介入は身体機能の低下だけでなく心理的状況、社会的状況を踏まえた方法を検討し、多角的なアプローチを行っていく必要性が明らかとなった。
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