前年度までにA町の高齢者を対象とした調査の分析により「過去1年間に転倒経験のある高齢者(以下、転倒経験者)」は転倒ハイリスク高齢者であり、身体機能低下や、心理的、社会的にも良好ではない状態が明らかになった。そこで転倒予防教室(以下、教室)において教育的介入が可能な要因を検討し、生活環境、歩行動作、筋力の3点について、高齢者自身が転倒リスクを認識し、改善可能であることを理解するとともに予防策を実践できるよう介入を行い、その後3ヶ月間予防策実施の継続支援を行い介入効果検証した。 A町において地区単位で実施している高齢者を対象とした交流事業の参加者を対象に教室を実施し、5地区で67名の参加を得た。研究協力の同意が得られ、除外基準に該当しない51名を研究対象者として分析を行った。平均年齢は75.3±6.48歳、男性13名(25.5%)女性38名(74.5%)、転倒経験者は8名(15.7%)であった。対象者のうち教室実施後、生活環境改善のための転倒リスクチェックを実施した人は、17名(33.3%)、転倒リスクチェック後環境整備を行った人は12名(23.5%)歩行動作の改善を目的とした意識歩行を継続した人は37名(37%)、筋力維持・低下防止の運動を継続した人は40名(78.4%)であった。転倒経験群(8名)、非転倒経験群(43名)における転倒予防策の実施割合は転倒リスクチェック(37.5%、32.6%)環境整備(37.5%、20.9%)意識歩行(50.0%、76.7%)筋力低下防止・維持運動(87.5%、76.7%)であり転倒経験群と非転倒経験群における予防策の実施割合に有意な差は認められなかった。また、教室終了後3ヶ月間のフォローアップ中に転倒を経験した方は4名で、そのうち1名が転倒経験者であった。 今後、教室後1年間の転倒発生率を明らかにし介入効果を検証していく必要がある。
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