児童精神科看護師と精神科看護師との比較から職業的IDの特徴を検討した。研究は郵送調査法にて実施。分析は、個人属性は単純集計、尺度は、Mann-WhitneyのU検定、強制投入法による重回帰分析を行った。7施設から研究への同意があり、422部配布。回収数は244部(57.8%)であった。有効回答は175部であり、児童精神科看護師74名、精神科看護師101名を分析対象とした。 PISN、自律性測定尺度、職務満足度尺度の比較では、職業的地位、看護管理、PISN得点において有意差があった。児童精神科看護師の職業的IDへの影響因子は、「実践能力」、「職業的地位」であった。このことから、児童精神科看護師の職業的IDには、看護観の形成・発展に寄与する概念の因子が影響を与えていることが考えられた。また、児童思春期領域は、思春期青年期にある若者へのこころの問題に対する精神科治療的アプローチが社会的に求められている時代において、施策面でも医療サービス面でも整備されつつある新しい専門領域である。さらには、思春期青年期という発達段階にあるという看護の対象や、広範囲に亘る包括的な内容の支援や多機関・多職種連携が求められているといった治療上の独自性をもつ領域でもある。児童精神科看護師の職業的IDへの影響因子は、そのような児童思春期領域の独自性に表象される概念の因子も影響を与えていることが考えられた。 以上より、以下の5点が示唆された。①職業的地位と看護管理において児童精神科看護師の方が有意に高い。②児童精神科看護師の方が職業的地位と看護管理に関する職務満足度が高い。③PISN得点は児童精神科看護師の方が有意に高い。④児童精神科看護師の方が職業的IDが高い。⑤児童精神科看護師の職業的IDへの影響因子は職業的地位と自律実践能力で、なかでも職業的地位が最も強く影響を与えていた。
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