本研究は、軽度要介護者の状態を時間経過とともに把握し、要介護状態の維持・悪化に寄与する要因を明らかにすること、そして新たな要介護状態の評価指標を開発することを目的としている。平成24年度は、地域で暮らす高齢者が介護保険で初めて要介護認定を受けてから、その後の要介護状態の変遷について分析を行った。分析対象者は、研究協力の得られた市町村の住民で、2001年から2005年までに初回要介護認定を65歳以上の年齢で受けた高齢者とした。さらに初回要介護認定時の要介護度が「要支援」「要介護1」「要介護2」の軽度要介護者を対象とした。分析方法は、生存時間解析で用いられるカプラン・マイヤー法を用いて、初回要介護認定時の要介護度別、性別、前期高齢者(65-74歳)・後期高齢者(65歳以上)別に、その後の「要介護度の維持・改善率」と「生存率」を算出した。 その結果「要介護度の維持・改善率」については、男性では初回要介護認定された要介護度が「要介護1」と「要介護2」の場合において、前期高齢者と後期高齢者でほとんど同じような値となり、明らかな差は見られなかった。男性で「要支援」の場合と女性の場合においては、前期高齢者の方が後期高齢者よりも「要介護度の維持・改善率」が高い傾向にあった。また「要介護1」と「要介護2」においては、前期高齢者では男性よりも女性の方が「要介護度の維持・改善率」が高い傾向にあった。後期高齢者においては、男女に明らかな差は見られなかった。「生存率」については、性別、前期・後期高齢者別にみても「要支援」が一番高く、次に「要介護1」、「要介護2」が一番低いという結果であった。
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