○小児がん患児の在宅療養における母親の体験分析 小児がん患児・家族の在宅療養の実態を明らかにするために、約6か月の長期入院後、在宅療養を1年以上経験している小児がん患児の母親2名を対象に、在宅療養生活の実態、支援者との関わりに着目して半構造化面接を実施した。 その結果、2事例とも、在宅療養への移行は、医師が中心となり母親と相談しながら調整され、保健部門との連携はなかった。在宅療養後の母親の不安や困難については、退院前の在宅療養に関する情報、医療者の十分な説明、在宅療養の見通し、相談相手が影響していることが明らかとなった。在宅療養後の不安の主なものは、体力、容姿の変化、再発、晩期障害、疼痛や嘔吐など症状出現時の対応、友人関係、漠然とした将来についてであった。また、不安や困ったことを電話や外来通院の際に直接主治医と相談できる体制が、つながりを感じることができ、不安軽減に役立っていた。母親は、児の看病をしながら、父親やきょうだい、祖父母への説明や家族間の調整役を担っていた。復学については、母親が中心となり学校に配慮事項を説明したり相談したりしていた。また、患児の病状だけでなく、年齢、発達段階、性格、母親の認識、学校環境、クラスメートの認識が支援方法に影響していた。 今回の調査から、①入院中から医師が親や学校に病状や治療、療養生活について説明できる環境をつくること、②両親やきょうだい等の家族の身体的、精神的、社会的側面において医療、保健、福祉、教育が連携して支援できる体制を整えていくことが必要であることが示唆された。しかし、事例数が少なく、また、個々の病状や環境によって問題が多様であるため、今回の結果を一般化することはできない。対象者数を増やして、患児の背景を考慮しながら、入院中からどのように連携体制を構築し、継続して支援するかを検討することが今後の課題である。
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