研究概要 |
本研究の目的は,「中等度・重度認知症高齢者の自己決定の機会を提供する看護介入プログラム」を作成することで,平成23年度は,平成22年度の調査結果をもとに作成した「認知症高齢者の自己決定を支える看護モデル」に基づく実践を行い,評価した。年度前半に介入モデルを検討し,調査場所への説明と同意を得た。調査は平成23年8月~9月にかけ,A市内のB介護老人保健施設において,VaD3名,AD1名,MMSE4~14点(中等度3名,重度1名)の計4名の協力者を得て実施した。実施方法は,週3日の計6日間,9時~12時に調査者が施設に滞在し,生活行動(排泄・活動・食事(間食)・レクリエーション)場面での自己決定を促した。 介入場面は4名ともに『間食』『レク』の2場面で,調査者が実施した先行研究と比較し介入場面が少なかった。これは,本研究の協力者が先行研究より認知症程度が軽度であったためと考えられ,認知症程度で援助が必要な活動が異なるといえる。また選択場面の分析から選択の仕方の経時変化をみると,『間食』では4名中2名(VaD2名)は介入初日から「私はお茶。」など明確な意思を示して選択し,介入初日は「どっちでもいい。」など曖昧であった2名(AD1名,VaD1名)は3日目以降で「コーヒーにしよう」などと意思を示し選択するようになった。『レク』では4名中2名(VaD2名)は初日から,提示したレク物品から選択し熱心に活動したが,他の2名(AD1名,VaD1名)は6日とも促しには興味を示さず,他の協力者とのレク場面は楽しそうに見ていた。これらから,本モデルをもとに援助を実践することで,認知症高齢者は自分の意思で生活行動を決定できるといえるが,認知症の程度や原因疾患の違い,間食・レクなど活動内容の違いよって意思の示し方が異なっており,様々な視点から介入方法を検討する必要性が示された。つまり介入モデルの提示だけでは臨床での実用性は低いと考えられ,このことを今後の検討課題とする。
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