研究概要 |
本研究は、地域で伴侶動物と暮らす人々がもつ生活習慣特性を活用した、コミュニティ育成のための支援プログラムの開発を目的としている。このプログラムには伴侶動物と暮らすことによる個々の健康増進の側面と、人々の交流を高めるという地域づくりの側面の2つの方向性がある。当初の研究計画では試案プログラムの実施と評価を行う予定であったが、初年度末から2年目にかけて、研究者が米国への海外派遣で長期不在となったため、研究計画が遅れ、4年間の研究期間で到達できる研究目標にするべく平成23年度に研究計画を修正した。 平成22年度は文献検討により伴侶動物と暮らす人々の生活習慣の特性について検討し、平成23年度は犬の飼育者を対象に行ったインタビュー調査の結果分析を行い、平成24年度は文献検討およびインタビュー調査の分析結果を踏まえて健康アウトカムや地域参加への認識を測定する質問紙の作成を行い、地域住民1,040名を対象に質問紙調査を実施した。平成25年度は質問紙調査の回収と分析を行い、プログラム試案の作成を行った。 質問紙調査結果として、犬飼育者は「地域参加」の得点が全般的に高く、犬の飼育者同士の気遣い合いや連帯感、サポート、特に「地域への所属意識」の高さが示されたことから、安定した住民層の中でも地域の交流の拡がりの核として活躍できる可能性が示唆された。このことは、開発されて一定の期間が経過した新興住宅地や長く住んでいる住民が多い地域において、このような犬飼育者が活躍できる機会がより期待できると考えられる。例えば、地域における保健活動において、地域で動物と暮らす人々がもつ生活習慣特性を活用した相互の健康づくりや社会的交流の促進といった保健事業、地域の見守りなどといった地域活動への向老期世代の参加につなげられる可能性があり、その実践方法の開発が必要とされる。
|