本年度の研究では、多施設における排尿障害を有する回復期脳卒中患者に対する排尿援助についての実態調査を実施した。調査対象は、「2010年版近畿病院情報」(医事日報)をもとに近畿圏下の病院で、診療科にリハビリテーション科を有し、施設基準としてリハビリテーション(脳血管)のある病院のうち1/2等間隔抽出法により選定し、郵送許可の得られた病院に調査票を郵送した。267病院に調査票を郵送し、202病院(75.7%)から回収があった。排尿援助については、排尿日誌の活用が32.2%に止まる一方で、行動療法の実施は75.7%であり、多くの施設で導入されていた。中でも、時間排尿誘導法、パターン排尿誘導法が多く実施されていた。また、排尿援助を実施する職種として、看護師は99.0%と最高で、半数の施設では介護職者や看護補助者と協働して実施していた。以上の結果より、行動療法の実施割合にくらべ、排尿日誌の活用割合は半分以下であることが明らかになった。排尿日誌が用いられていない場合、排尿に関する情報を経時的に詳細に得ていないことが多く、患者の状態にあった行動療法の実施、実施による効果判定のためにも、排尿日誌の活用割合が、行動療法の実施割合により近づくことが望ましいと考えられた。また、排尿援助は、多職種と連携しながら実施に至っていることが示された。排尿行動が少しでも自立できるような排尿援助となるためにも、職種を問わず実施可能なエビデンスに基づいた共通のケア計画が必要であることが明らかになった。現在は、次ステップとして、排尿日誌の活用及び排尿誘導法のプログラムを作成中である。 本研究は、自立支援、寝たきり予防の観点から排尿援助のあり方を示す研究として実施している。エビデンスに基づいた実践のためにも、本研究を続行する意義は大きいと考える。
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