排尿障害のある脳卒中患者にとって、排尿の機会に、ベッド上でおむつ交換だけに終わることは、尿失禁の改善が得られにくいうえに、トイレに行くという生活上のリハビリテーションの機会を失うことになり、筋肉量やADL自立度の維持・向上を阻害する可能性があると考えられる。先行研究において、尿失禁のある患者に対して、排尿誘導法の実施が、尿失禁の改善につながることが示唆されている。また、研究代表者が行った研究において、自らの力で動作を行おうとする能動的動作を引き出す排尿援助をしている患者の方が、筋肉量が多い傾向にあった。そこで第一に、回復期脳卒中患者における入院中の筋肉量の変化量の意義を示すため、入院中の基本的ADL向上群と不変・低下群の間で、入院中の筋肉量の変化量に違いがあるか関係をみた。第二に、病棟で実施されている援助として、入院中の筋肉量の変化量を用いて、トイレ排尿誘導を行っていることの効果について検討した。 1.入院中の筋肉量の変化量の意義 入院中の基本的ADL向上群と不変・低下群の間で、入院中の非麻痺側下腿、および麻痺側下腿において筋肉量の変化量に有意差が認められ、基本的ADL向上群の方が低下群より、入院中の筋肉量の変化量が大きかった。また、非麻痺側下肢全体の筋肉量の変化量も同様に有意傾向を示した。入院中のADLの変化に入院中の筋肉量の変化量が関係していることが明らかとなり、回復期脳卒中患者における看護援助の評価指標として筋肉量の変化量を用いることができると確認した。 2.入院中の筋肉量の変化量を用いたトイレでの排尿誘導 病棟で実施されている援助として、トイレ排尿誘導を実施しているか否かにより、入院中の下肢筋肉量の変化量に有意な違いは認められなかった。少数例での検討のため、今後データ収集を重ねていく。また、より積極的に意図した能動的動作を取り入れた排尿誘導法の効果を検討していく必要がある。
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