本研究は、近隣住民等から精神障害者に関する相談や通報があった際、保健師が初回訪問時に実践している援助内容および看護技法を明確にし、地域で生活する精神障害者の看護のあり様を考察するものである。 平成23年度は、昨年度の10名に加えて新たに4名の保健師に対しインタビュー調査を行った。分析の結果、通報時における援助内容および看護技法として、(1)通報時における体制を整える、(2)通報に至った背景や病態をつかむ、(3)人間関係の確立、(4)通報制度について法律の観点から説明する、(5)個々に応じた助言、(6)他機関との連携、(7)通報要件への判断、(8)措置診察の円滑な遂行、(9)医療につなげる支援、の9つのカテゴリーが抽出された。また相談時においては、(1)早急な対処を要するか見極める、(2)家族と接触する糸口を模索する、(3)医療につなげる、(4)信頼関係の構築、(5)職域を明確にする、(6)助言する、(7)他機関との協働、の7つのカテゴリーが抽出された。 保健師は通報のあった精神障害者に関する情報がほとんどない中で、医学的な側面も加味しながら心身の状態等を総合的にとらえ、通報要件の判断や措置診察への援助を行っていた。さらに個々の状況に応じて助言や他機関との連携を行う等、保健師として、精神障害者やその家族にとって現時点での最善の方法を常に考え看護援助を行っていたと考える。 また相談時においては、相談者の訴えをうのみにするのではなく、相談内容に関する情報をすみやかに集め、精神保健担当者間で対応を協議し、時には早急に対処していた。緊急性はないも相談対象者に医療が必要な時、相談対象者または家族と接触する機会や方法等について詳細かつ慎重に検討し、接触を試みていたが、中には人権への配慮等を重視するあまり医療導入が遅れ症状悪化につながることも想定されるため、今後、相談時における援助の新たなシステムの構築が必要であると考える。
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