【研究目的】精神科訪問看護のあり方を考えるため、精神科病院に併設された訪問看護ステーションからの訪問看護を否定的にとらえて中断した統合失調症の人の体験を明らかにすることを目的とした。 【研究方法】記述的探索的研究デザインにより現象学的アプローチを用い、Giorgiの方法に準じて分析した。参加者は訪問看護を否定的にとらえて終了したことがあり、研究参加への意思決定ができると主治医に判断された統合失調症の人であり、所属する大学の倫理委員会の承認を得て実施した。 【結果】参加者は男性3名、女性4名の計7名、年齢は40歳から63歳までで平均年齢47.8歳、単身生活者3名、同居者がいる人4名であった。訪問看護の利用頻度は月1~8回であり、開始してから0.75~11年で中断していた。参加者の体験は以下の《 》で示す9つの意味にまとめられ、その関係性から次のように説明することができた。 参加者は《自分自身の生活》を営む中で《一人きりのつらい生活》を抱え、《訪問看護への期待》をもっていた。しかし《医療者にはただ従う》という態度が存在し、《分かり合えない医療者》から《役に立たない訪問看護》、《自分の領域への脅かし》を受けた。そのため《看護師との暖かいつながり》はあるものの《もてなしへの負担感》もあり、訪問看護を中断した。 【考察】訪問看護を中断した参加者と看護師には、信頼関係に基づいた意思の疎通がなく、ニーズの把握がされていなかった。これは統合失調症の脆弱な自我機能のみならず、過去の強制的な治療等の経験が影響し、意思表出が抑制されていることが影響していると考えられた。以上より、患者の意思を十分に尊重しながら信頼関係の構築を図り、訪問看護への期待を引き出して看護していくことが必要であると示唆された。しかし本研究では十分な参加者が得られなかったため、この結果を一般化するには限界がある。
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