本研究は、日本における産業看護職に必要な能力およびその能力を向上させるための教育方法を明らかにすることを目的としている。 今年度は、昨年までに作成した「初任期の産業看護職に必要なコンピテンシー原案」について、項目内容についての意見を得るため、国内の看護系大学で産業看護学の教育・研究に携わっている教員11名および、産業保健関連学会への投稿または公的に開催される産業看護職原因教育の講師経験がある産業看護職実践者11名を対象に、自記式質問紙調査を実施した。 15名より回答が得られ(回収率71.4%)、項目の過不足や文章の表現方法等について意見を得た。得られた意見を基に原案を修正し、回答を得た15名を対象に、内容の妥当性を検討するための質問紙調査を再度実施した。その結果、「初任期の産業看護職に必要なコンピテンシー案」として「1.事業場を理解する能力」、「2.事業場の安全衛生管理体制を活動の根拠を理解する能力」、「3.個人への健康支援を行う能力」、「4.集団への健康支援を行う能力」、「5.作業環境管理・作業管理を行う能力」、「6.健康危機管理を行う能力」、「7.産業保健活動の管理をする能力」、「8.産業保健活動を円滑に推進する能力」、「9.専門性を維持向上するための能力」の9つのカテゴリーと、各コンピテンシーの獲得状況を評価するための67の行動目標が確定した。これらの各項目について、日本産業衛生学会産業看護部会に所属する産業看護職1289名を対象に、重要性の程度(1.重要でない~7.重要である)および実施状況、対象の属性や職場の特徴を問う質問紙調査をした。 この質問紙調査は現在回収中であり、今後この結果からコンピテンシーを確定し、研修ガイドを作成する予定である。
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