研究課題
本研究の目的は、筋萎縮性側索硬化症(以下、ALS)在宅人工呼吸療養(以下、HMV)者の口腔に生じる問題を明らかにし、口腔ケア技術を体系化することである。1)ALS/HMV者の口腔の問題とその対応の実際について明らかにすること、2)ALS/HMV者の口腔ケアの体系化を行う2つの観点から、初年度は、1)を中心に行い、ALS/HMV者の口腔および口腔ケアに対する実態調査、療養経過と支援方法に関して整理し以下の成果を得た。本研究では、ALS/HMV者52例の口腔に生じていた問題を聞き取り調査により抽出し、さらに14例について口腔ケアに関する参加観察調査を行った。うち4例に対しては歯科医や歯科衛生士との連携により口腔リハビリテーションを取り入れた口腔ケアを実施した。その結果、口腔の問題としては、唾液(流挺過多など)28例、開閉口困難18例、舌の肥大化13例、咬舌13例、舌の乾燥10例などが指摘された。舌については、ALSの診断ガイドラインとして球麻痺所見にあたる舌の麻痺,萎縮,線維束性収縮が示されているが、ALS診断時に舌の萎縮が認められたものの、その後の経過で舌が肥大化する症状が認められていることが明らかとなった。口腔ケアの問題としては、身体の固縮や疲労によりヘッドアップや顔を横にむけることができなかったり、頭部後屈位をとる以外に開口できる手段がなく咽頭付近に唾液が貯留する状況であるなど誤嚥防止策がとれないこと、口腔内への刺激などによる唾液量の増加に応じた吸引の判断や人工呼吸管理等の知識・技術が必要であること、個々に応じた意思伝達手段の習得が必要であること、これらALS/HMV者に特化した専門的な知識や技術をもつ介助者の確保が難しいこと、などが指摘された。なお、舌の肥大化については歯科医、歯科衛生士の協力を得て口腔リハビリテーション、マウスピースの取り組みを行っているところであり、次年度は口腔の問題の対策に関する検討と支援方法についての体系化を図ることが課題である。
すべて 2010 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
日本難病看護学会誌
巻: 14(3) ページ: 195-200
巻: 14(3) ページ: 179-193
巻: (印刷中)