本研究は現象学的手法を用いて、医療観察病棟でのケアについての体験を探索的に明確にしていく質的研究である。本研究では、医療観察法病棟での治療・リハビリテーションにおける患者参加型ケアの実態を明らかにし、ケアの方向性を探ることを目的としている。研究の初年度である22年度は、医療観察法病棟でのケアの提供者(看護師)とケアの受け手(入院患者)の個々に、一対一の面談を実施し、日々の体験や患者参加型ケアに関する思いや意見等の詳細なインタビューを行った(看護師27名、患者14名)。インタビューは、平均1時間30分程度要したが、参加者によっては、これ以上長くなることや、短時間で終了する者もいた。また、数回インタビューを行った参加者もいた。このように、医療観察法病棟で提供されるケアについて、ケアの提供者と受け手の双方から、それぞれの体験や見解を探っていく研究はこれまでになく、22年度の研究によって、医療観察法病棟における看護師と患者の双方の視点が明確になることは、精神看護学および司法精神科看護の領域におけるケアの質の向上の一助につながると考えられ、意義のあることである。本年度は、データ収集に加えて、数名の研究参加者(看護師および入院患者)から得たデータの分析にも着手した。この初期的分析の結果から、患者参加型ケアに関する利点と欠点が浮かび上がってきた。また、患者参加型ケアを実現するためのケアの方向性も少しずつ浮かび上がってきた。
|