研究概要 |
昨今、患者の主体性を尊重したケアへの関心が高まってきており、患者と共同した治療の取り組みも始められている。しかしながら、精神科医療の中でも、司法精神科医療の分野においては、この患者の主体性を尊重した治療や、患者参加型のケアに関する研究は殆どなされていない。おそらくこの理由は、司法精神科医療そのものが、強制医療であるということや、入院している患者の特殊性、つまり触法精神障害者に関連して、難治性の疾患であること、治療的関係の構築が難しいといわれる人々であること、そして暴力の問題などが関連しているのだろう。しかし、こういった司法精神科医療において、患者の治療への動機付けの研究など研究調査の数は比較的少ないが、ここ数年の間に実施されるようになり、強制医療の中での触法精神障害者による治療への主体的な取り組みや、患者の意向を尊重したケアへの関心が高まってきているといえる。日本における司法精神科医療でも、患者の主体性を尊重した患者参加型のケアを理想としているが、実際にどのように行われているのかはまだ明らかにされていない。本研究では,司法精神科医療における患者によるケアの選択について、看護師と患者の見解を探索的に明らかにすることを目的とし,解釈学的現象学アプローチを用いて研究を行った。本研究の成果として,5 つのことが明らかとなった。(1) 看護師のとらえる患者参加型ケアの意味, (2)患者参加型ケア-患者の自己決定・選択の現状, (3) 患者参加型ケアのための援助技法,(4) ケア計画に関する患者参加の現状, (5) 患者参加型ケアに関する患者-看護師関係における確かめ合いの現状。
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