研究概要 |
通所介護施設において、主にアルツハイマー病の利用者を対象として、施設の近くにある公園などの特定の場所“寄り道先”に定期的に歩いてでかけるプログラムを実施した。2010年から2011年にかけてA-B-A'-B'法(Campbell and Stanley, 1966)を用いて、散歩をしない時期と散歩をする時期とを繰り返し、認知症高齢者、家族介護者、施設職員に対して聞き取り調査、アンケート調査を実施した。その2年間で行った調査では、B’まで参加できたのは半数であり課題も多く認められたため、本年度は施設職員と寄り道散歩プログラムに同行したボランティアに対するヒアリング調査を実施、分析し、本プログラムの実行性について調べようとした。 ヒアリング調査では、施設職員5名とボランティア5名に対した。寄り道散歩プログラムを実施したときの調査対象高齢者の変化、プログラム前後の調査対象高齢者の様子、調査の対象でない高齢者の反応、送迎時などにおける家族からのコメント、途中で中止した利用者の特徴について調べた。 調査対象高齢者の変化としては、寄り道散歩プログラムを実施して2週間から1か月程度はとまどう場面がみられるものの、1か月を経過するころには継続できている利用者全員がでかけることを楽しみにしていた。見当識障害の軽い利用者は散歩の前から楽しみにしており、認知機能の低下が著しい利用者は散歩の後の送迎を待つまでの間を比較的穏やかに過ごせるようだった。調査の対象でない高齢者の反応としては、散歩に行きたいのに家族からの同意を得られない利用者が「どうして自分だけいけないんだ」と不満を漏らすことがあったこと、認知症でない人や軽度の認知症の人は静かに過ごせるので落ち着いていたことが語られた。 研究期間を1年間として通所介護施設で介入調査を行うことは、脱落者が多くなり、再度研究方法を検討する必要がある。
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