研究課題
本研究課題は、数学的な構造を備えている計算問題を取り扱うために、新しいアプローチを考察し、新しい技術を開発することを目標としている。初めに23年度は、22年度に得られた成果をさらに進展させ、性質検査という枠組みでこの研究を推進した。特定の群のクラスを区別する問題に対するアルゴリズムの構築に着目し、群論の基礎となる巡回群上の性質を項式時間で検査するアルゴリズムを構築した。この手法を一般の可換群にさらに拡張し、同型でない二つの群の距離の最小値を求めるという、1992年にAles Drapal氏によって提示された離散数学の未解決問題を解くことに成功した。また、23年度に行った研究のもう一つの対象は行列の積を計算する問題であった。この問題は数学や計算機科学において極めて重要な問題でありながら、行列積の計算量が未だ明らかになっていない。しかしながら、スペシャルケースであるプール行列に着目し、この問題の組合せ論的な要素を特定することによって積の計算を高速化する新しい手法を導き、プール行列積を求める高速な量子アルゴリズムの構築に成功した。最後に取り組んだのは、代数学に基づく多者間セキュア計算プロトコルの構成であった。プライバシーを考慮した情報検索という暗号理論の基礎的な問題に着目し、1個のデータベースの場合、データベースのサイズより少ない通信量(準線形計算量)の量子プロトコルを構成することに初めて成功した。古典通信のみを用いた場合、そのようなプロトコルが存在しないため、この成果によって量子情報の優位性のさらなる確立が示された。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
Journal of Combinatorial Optimization
巻: (印刷中)
DOI:10.1007/s10878-011-9445-8
European Journal of Combinatorics
巻: Vol.33, No.4 ページ: 474-476
DOI:10.1016/j.ejc.2011.10.009
Chicago Journal of Theoretical Computer Science
DOI:10.4086/cjtcs.2011.006