今後、無線LANは設置の自由度の高さから様々な管理者によってあらゆる場所に設置される。その結果、無線エリアの重複に起因する無線干渉が頻繁に発生し、無線LANを使用する移動端末の通信品質が大幅に低下してしまう。本研究ではそのような環境下においてアクセスポイント間で協調して無線エリア制御し、通信品質低下を低減する手法を検討している。昨年度までは各アクセスポイントで無線エリア内の各地点における通信品質をリアルタイムに監視するための無線計測アーキテクチャを提案した。本年度は、提案アーキテクチャを発展させ、リアルタイム計測における計測情報の適切な処理手法まで研究対象としていた。まず、先行研究の提案アーキテクチャを基に使用するため、新しいシミュレーション環境への移植を行った。先行研究では使用したシミュレータがQualnetのバ0ジョン4.0と古く、今後の拡張における潜在的なプログラムエラーの回避とシミュレーション結果の更なる信頼性向上のために、提案アーキテクチャを最新バージョン5.0.2上へ実装した。ただし、実装過程で大幅なプログラム改修が必要となり、来年度も継続して実装作業を行う必要がある。また、収集した計測情報の処理手法についての検討も行った。具体的には、実環境において無線計測を行い、通信品質を取得するための品質指標の調査を行った。その結果、フレームエラー率が品質指標として利用できる可能性が高い事を確認した。
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