今後、無線LANは設置の自由度の高さから様々な管理者によってあらゆる場所に設置される。設置された無線LANのカバーエリアは互いに重なり合い、重複エリア内で無線通信を行う移動端末は両方の無線LANから影響を受けてしまう。その結果、無線エリアの重複に起因する無線干渉が頻繁に発生し、無線LANを使用する移動端末の通信品質が大幅に低下する。本研究ではそのような環境下においてアクセスポイント間で協調して無線エリア制御し、通信品質低下を低減する手法を検討している。今年度では、昨年度より継続して実装していたシミュレーションを用いた移動端末の品質低下の要因を検討した。検討の結果、移動端末の通信品質の低下する原因はエリア重複にくらべ、一つのアクセスポイントへの通信が集中することによる影響が大きい事が判明した。また実環境においては様々な外的要因が重なって品質低下が発生する事が知られているため、実環境でのフィールド実験も行った。そこでは、複数のアクセスポイントを用いた無線メッシュネットワークを構築して実験を行った。実験は、140名程の参加者で行われた会議の一室をカバーした環境、及び140名程の参加者がおり6部屋にまたがるエリアを構成したイベント環境での無線計測を行った。計測の結果、通信品質の低下原因がエリア干渉だけでなく様々な要因で構成されている事を確認した。
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