研究課題
<比較現生有蹄類のメゾウェア分析>リュウキュウジカやリュウキュウムカシキョンについて、メゾウェア分析による食性復元の精度を高めるため、食性ならびに生息環境が既知の現生ニホンジカを対象にメゾウェアデータの収集ならびにその解析を進めた。日本全国のニホンジカ14集団を対象に、メゾウェアデータと、採食物中のイネ科植物、非イネ科植物、果実等の割合や生息地降水量などの生態データとの関係を調査した結果、採食物中のイネ科植物の割合と最もよく相関した。近似曲線のあてはめにより、メゾウェアスコアから採食物中のイネ科植物割合を推定することが可能となり、この関係式を化石シカ類に適用したところ、イネ科植物の採食割合はリュウキュウジカで約12%、リュウキュウムカシキョンで約8%と推定された。このことは両者とも現生有蹄類の中では木本植物主体のブラウザーに位置付けられること、またリュウキュウジカの方がより中間型寄りの食性を持つことを示しており、炭素・酸素安定同位体分析の結果ともよく整合する。<現生ニホンジカに見られる歯の性的二型についての形態学的研究>シカ類は現生種に限らず体サイズに顕著な性的二型を持つことが知られている。その結果、体の大きなオスはメスよりも相対的に小さな歯を持つことが指摘されてきたが、その進化生態学的な意味について充分には検討されてこなかった。東北地方に生息するニホンジカ2集団を対象に、切歯サイズの比較を行った結果、メスはオスよりも相対的に切歯が大きいこと、またそれは繁殖可能期間がメスでより長いことに対応していること、さらに島嶼集団ではオスでも切歯の大型化進化が生じるため、切歯サイズの性差が縮小することが明らかとなった。このことは、化石シカ類においても島嶼環境に特異的な選択圧によって、歯の性的二型が縮小している可能性を示唆する。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Biological Journal of the Linnean Society
巻: XXX ページ: XX-XX