本研究課題では、戦後日本の遺伝学の歴史を政治的・社会的文脈の中で分析し、物理学や工学のような目に見える戦争協力技術を持たなかった遺伝学においても冷戦期に多大なる政治的社会的影響を受けていたことをいくつかの事例を通して明らかにした。特に、ソビエトの農学者であったT. D.ルイセンコの出した説に関する論争(ルイセンコ論争)が、遺伝学の概念や研究方法の選択にどのような影響が及ぼしたのか、また、ルイセンコ論争を含む冷戦期の政治的背景が静岡県三島に戦後間もなく(1949年)設立された国立遺伝学研究所の発展にどのような影響を与えたのか、を検討した。
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