研究概要 |
本研究は、酸素輸送担体:ミオグロビン(Mb)を過剰発現あるいは発現抑制する骨格筋培養細胞系を確立するとともに、骨格筋細胞内のMb発現量を調節した時のMbとミトコンドリアの相互作用、親和性、ならびに筋細胞の呼吸活性について検証することを目的とした。 本年度は、1)骨格筋芽細胞の選択と筋管への分化条件の検討、2)Mbを過剰発現させるための発現ベクターの作製に取り組んだ。その結果、次のような成果を得た。1)骨格筋培養細胞としてラット由来骨格筋芽細胞(L6)を用いたが、推奨培養条件では筋管形成が十分ではないため、インスリン刺激による分化誘導を試みた。細胞培養液へのインスリン添加を行ったところ、分化が促進され、筋管細胞が増加したL6細胞を得た。また、分化による発現タンパク質の経時変化を観察したところ、インスリン刺激によりミトコンドリアマーカータンパク質の増加が確認された。2)Mbを過剰発現させるため、哺乳類細胞で高レベルの発現を行うCMVプロモーター搭載のpcDNA3ベクターを用い、Mb cDNAをTAクローニングにより組み込んだ。さらに、過剰発現させた際にタンパク質相互作用、親和性を確認するため、エピトープタグであるc-mycを付加し、myc/Mb/pcDNA3発現ベクターを得た。c-mycは免疫反応性の高いエピトープタグであり、大きさが比較的小さいため、Mbのような低分子タンパク質の機能を阻害しにくいと考えられる。 来年度は,作製した発現ベクターを用いて遺伝子導入を行い、Mbを安定して過剰発現するL6骨格筋芽細胞株を作製し、Mbとミトコンドリアとの関連性や呼吸活性の変化の解明に取り掛かる予定である。
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