本年度は、前年度で確立した胃の腫瘍モデルであるGanマウス、腸の腫瘍モデルであるAp^<Δ716>ノックアウトマウスの主要組織からの上皮細胞の単離、培養、遺伝子の導入法を、遺伝子の腫瘍形成、悪性化における機能解析に使用することを行った。 腫瘍細胞の悪性化、転移を誘導する内在的な機構として、上皮間葉移行(EMT)に着目した。EMTを誘導することがこれまでに示されている遺伝子をGFPと共に発現するベクターを構築し、胃、及び腸腫瘍より培養した上皮細胞に導入したが、TGF-betaを導入した時に細胞の成長が抑制されたほか、顕著なEMTを示すような形質変化は見られなかった。 そこで、胃腫瘍形成に関わる因子を新たに探索することを試みた。GanマウスはWntシグナルの亢進と、PGE_2経路の活性化により炎症を伴う胃がんを発生する。このときの遺伝子発現をマイクロアレイにより解析した結果から、炎症依存的に発現が亢進する遺伝子が得られた。これらの中から胃幹細胞で発現が高い遺伝子を選び、siRNAを用いてノックダウンした際の腫瘍原性への影響をヒト胃がん細胞のソフトアガーコロニー形成を用いて調べ、新たな腫瘍形成に関与した遺伝子群を明らかにした。これらの遺伝子を培養下の上皮細胞に導入しその形質変化を調べる実験は現在進行中である。 また、腫瘍細胞より単離、培養し遺伝子を導入した細胞を再びマウスの腫瘍、あるいは正常の組織に移植しその形態変化を調べる実験も現在行っているところである。
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