研究概要 |
これまでの認知・言語発達の心理学的研究では、背景にある理論から仮説を立て、慎重に設計・統制された実験により、その仮説を支持または棄却する、という仮説検証型のパラダイムがとられてきた。本研究では、従来の仮説検証型パラダイムに対し、自由度の高い実験設計および高度な情報解析を基にした探索的なパラダイムを提案する。探索的パラダイムでは、認知・行動的情報を視線や体の動き、脳活動などの多センサにより計測し、データ駆動的な解析(データマイニング)により新たな知見の獲得を行う。 本年度の研究成果は、The Ninth International Symposium on Intelligent Data Analysis,International Workshop on Spatial and Spatiotemporal Data Mining (SSTDM)などで発表を行った。これらの研究では、多センサ計測したヒト(1個人または複数人)の行動を、非線形力学系理論に基づき分析するためのアルゴリズムを提案した。提案したアルゴリズムは、従来の分析と異なり、時系列を非線形力学系から生成されたパタンとみなし、その離散化(記号力学系に基づく)を行う。アルゴリズムでは、記号空間と位相空間の二つを同時最適化する事で、多次元の位相空間から、行動特性を記述するためにより情報量の高い次元を選択する。このアルゴリズムを適用する事で、ヒトの顔表情から自動的に部分をクラスタ化し、笑い顔や話し顔を分類する事が可能であることが示された。また、ヒトとヒト、またはヒトとロボットのコミュニケーションのパタンを特性付けるためにも同手法が有効であることが示された。
|