研究概要 |
Use-dependent plasticity(使用依存的可塑性)は、訓練による機能回復の神経基盤の一つである。慢性期脳卒中患者においては、しばしば麻痺側上肢の屈筋群に痙縮を生じ、上肢機能を阻害している。これらの患者において、上肢屈筋群の拮抗筋である伸展筋群に特異的にUse-dependent plasticityを誘導することができれば、機能回復が可能であると考えられる。そこで我々は、末梢神経筋電気刺激の補助下で手関節と手指の伸展筋の運動訓練と患側一次運動野(M1)への高頻度(5Hz)経頭蓋磁気刺激を組み合わせたハイブリッドリハビリを行うことで(週2回×6週間)、患側M1において伸展筋に特異的なUse-dependent plasticityを誘導し、麻痺側上肢機能を長期的に回復させた(Koganemaru et al., 2010)。さらに、我々は上記の介入による神経ネットワークの変化を検討するため、新たに慢性期脳卒中片麻痺患者11名において、介入前後および2週間後に、上肢伸展運動及び屈曲運動中のfMRIを撮像した。その結果、介入前に比較し介入後では、麻痺側上肢の伸展運動中、患側SMC、患側及び健側の背側運動前野の活動の減少が認められた。その一方で,屈曲運動時にはそれらの変化を認めなかった。ハイブリッドリハビリにより、伸展運動に特異的な神経ネットワークの効率化が起こり、上肢機能の回復をもたらしたと考えられた。
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