平成22年度計画(神経成長・栄養因子による抗腫瘍効果のメカニズム解明と有効性を示すがん細胞種の特定)に基づいた一次スクリーニングとして、細胞増殖能を指標としたin vitro評価系においてnerve growth factor (NGF)もしくはbrain-derived nerve factor (BDNF)によるヒト前立腺癌細胞(DU145)およびヒト線維肉腫細胞(HT1080)に対する直接的な影響について検討した。その結果、DU145細胞増殖に対してNGFおよびBDNFはいずれも濃度依存的かつ有意に抑制したが、HT1080細胞増殖に対してそれらの影響は認められなかった。二次スクリーニングでは、ヌードマウスにがん細胞を移植・増殖後、浸透圧ポンプを用いてNGFを持続皮下投与し、DU145およびHT1080細胞増殖に対する影響をin vivo評価系において検討した。その結果、NGFはいずれの細胞増殖も有意に抑制し、生存率の著明な増加も認められた。さらに、NGF投与中止後もその効果が持続する事が明らかとなった。以上の検討結果より、NGFおよびBDNFはいずれもDU145細胞増殖に対して直接的な抑制作用を示すこと、また、その効果が認められないHT1080細胞増殖に対してもNGFが著明な抑制効果を示す事が明らかとなった。引き続き、その他ヒト由来がん細胞増殖に対するNGFおよびBDNFの影響について継続検討している。
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