我々の日常生活は複数の選択肢の中から適切で望ましいものを選ぶ作業の連続であり、意思決定の神経科学的基盤を明らかにすることはシステム神経科学分野における最重要課題の一つである。ドーパミンが意思決定にどのような影響を与えるかをヒトでの行動薬理学実験で得られるデータを基に、動物実験での基礎データと行動経済学理論を援用して解明することが本研究の目的である。 本研究では行動課題として報酬を獲得するために経済学的パラメーターの異なる複数の選択枝の中からボタン押し反応により選択行動を行う実験を用いた。被験者として4名の医局員の協力を得て予備実験データを収集した。この予備データをもとに行動課題の内容を再検討した。 2010年11月に開かれた米国神経科学大会に出席し昨年までの成果であるドーパミン細胞記録研究についてのポスター発表を行った。またこの機会に欧米の行動経済学者と会い、今後の実験の方向について議論を重ねた。これにより実験の内容、方法について重要な示唆を得ることができた。 2010年12月に本学倫理委員会に研究計画書を提出し、実験課題の内容、被験者募集方法、謝金の支払いに関して承認を得た。本実験に向けて実験環境を整備するために、必要なハードウエアを購入し設置を行った(デスクトップコンピューター1台とラップトップコンピューター1台、PCモニター一台、National Instruments者のdata acquisition board 1台)。現在、行動課題を制御するコンピュータープログラムを現在作成している段階である。
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