研究概要 |
トップダウンアプローチを用いて疲労感の神経メカニズムの解明するために、脳磁図(magnetoencephalography, MEG)計測による、以下の2つの研究を行った。(1)古典的条件付けを用いた疲労感の神経活動の研究。健常被験者10名を対象に、第一日目にメトロノーム音を聞きながら精神疲労負荷課題を行ってもらい、第二日目に第一日目と同一のメトロノーム音を聞いているときの脳活動をMEGにより計測した。主観的なデータからは、第二日目にメトロノーム音を聞くことで疲労感が誘発されていることが確認できた。等価電流双極子法による磁場応答の信号源推定では、メトロノーム音の聴取により、一次聴覚野の応答に続いて島皮質、側頭葉内側、後帯状回に信号源が推定可能であった。(2)疲労した人物画像を見ることで生じる神経活動の研究。健常被験者13名を対象に、ランダムな順番で提示される「疲れた人」の写真と「疲れていない人」の写真を見ている時の脳活動をMEGにより計測した。等価電流双極子法による磁場応答の信号源推定では、一次視覚野の応答に続いて、「疲れた人」を見た場合にのみ後帯状帯に信号源が推定可能であった。以上の結果から、後帯状回が疲労感の神経メカニズムに関わっていることが示唆されるとともに、疲労感の古典的条件付けや、疲労のミラーシステムといった全く新奇なアプローチによる脳機能研究が疲労研究に有効であることが示された。
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