研究課題
視覚障害者の日常生活をサポートするための環境システムや適応訓練法の開発には、客観的指標による評価法(指標)が必要となる。従来、視覚障害者の音源定位評価法では内省や身体部位などによる定位評価を行う際に、指標の客観性や精度に問題が認められ、それらの結果は必ずしも一致していなかった。そこで、本研究では健常者を対象に脳波(事象関連ん電位:ERP)を用いて、聴空間表象座標を神経レベルで明らかにし、音源定位能の諸相を検討することを目的として研究を推進した。2音源オッドボール課題によるERPを用いた音源定位能の評価を実施した先行研究では、標的刺激に対する非標的刺激の電位成分N1およびP2の振幅間隔が、標的刺激の音源角度と正の相関があることを示したが、心理・行動レベルの指標との関係性までは検討できていなかった。そのために本研究は先行研究の方法をより精緻化し、ERPで示される生理的指標が実際の心理・行動レベルにおける指標と一致するかどうかを検討することとし、生理学的指標による客観的評価法の開発を目指した。ERPによる音源定位能の評価は先行研究におおよそ準じた方法を用いたが、実際の行動レベルの評価には、身体部位等による指示や、従来の精神物理学的手法による内観による閾値は用いずに、信号検出理論に基づくROC曲線を用いることにより、被験者の音源角度の差異に対する信号検出の感度や判断の偏り等の、より詳細な指標を用いることとした。その結果、電位の振幅値と台形法により算出したROC曲線内の面積との間に正の相関が認められ、事象関連電位による客観的評価法の妥当性を検証することができた。本研究の成果に加え、今後の音源定位能の電位検出の高速化・効率化を目指す研究との融合により、音響に関する環境システム作りの基盤を提供できうると考えられる。さらに、音源定位能の向上の客観的な指標となることから、視覚障害者の環境適応、特に音源定位能の程度を知りためのツールを提供できると考えられる。
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Movement Disorders
巻: 26(5) ページ: 837-843
DOI:10.1002/mds.23576
日本ロービジョン学会誌
巻: (校正・印刷中)(印刷中につき未定)