脳血管障害患者74人の足関節底屈筋の筋緊張をModified Tardieu ScaleのR1とR2、Ankle Plantarflexors Tone ScaleのStretch Reflex(SR)、Middle range resistance(MR)、Final range resistance(FR)などの指標を用いて、中枢性要素および末梢性要素に分けて測定した。罹患日数が180日未満の短期群と180日以上の長期群に分けて、各指標の群間差を統計解析した。また足関節底屈筋の伸張反射が亢進している50人をサブグループとして抽出し、同筋を構成する二関節筋と単関節筋の伸張反射の程度を、膝伸展位と膝屈曲位の測定値を比較することで検討した。加えて、両肢位間の相関係数を求めて二関節筋と単関節筋の伸張反射の関連性を検討した。結果、膝伸展位のSRとMRは長期群に比して短期群が有意に大きかった(共にp<0.05)が他の指標は両群間に統計学的有意差を認めなかった。また伸張反射亢進を認める対象50人の検討では、膝伸展位に比して膝屈曲位で有意(p<0.05)に高値を認めた。また、両肢位間で中等度の正の相関(rs=0.66)を認めた。今回の検討により、罹患日数の長短で比較した場合、180日未満の対象では二関節筋の伸張反射がより亢進し、180日以上では同筋の伸張反射亢進の程度が弱まると示唆された。一方、(罹患日数を考慮しない)伸張反射亢進を認める対象の検討では、二関節筋に比して単関節筋の伸張反射亢進を認め、且つ両筋の伸張反射には関連性があることを確認した。本研究結果から、発症後早期には二関節筋の伸張反射の変化に注意する必要があるが、時間経過と共に単関節筋の伸張反射亢進にも視点を置く必要があると示唆された。今回得られた中枢性要素の変化に関する知見は、筋緊張に対するリハビリテーションを考えるうえで重要な情報になるものと考えられた。本データについては、23年度も詳細な解析を継続する予定である。
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