研究概要 |
これまで脳血管障害患者の継時的な筋緊張の質的および量的変化は、ほとんど検討されてこなかった。しかし、本研究によって以下のことが明らかになった。 本研究の結果から,脳血管障害発症後180日未満の対象では、発症後180日以上の対象に比べて足関節底屈に作用する2関節筋の伸張反射が亢進しているが、単関節筋の伸張反射の程度には違いが無いと示唆された。一方、伸張反射の程度と罹患日数の間に関連性を認め、2関節筋および単関節筋の伸張反射は、発症後の時間経過に伴って強くなると示唆された。さらに、発症後短期の対象では、足関節底屈筋における膝伸展位の伸張反射と筋伸張中間域の抵抗が、発症後長期の対象に比して有意に高値であった。加えて、発症後短期の対象の膝伸展位と膝屈曲位における足関節底屈筋の伸張反射と罹患日数の間に正の相関を認めた。これらの結果から、伸張反射の程度や筋伸張中間域の抵抗は、発症後180日程度までは時間経過に伴って変化すると考えられた。また、足関節底屈筋の膝伸展位における伸張反射と筋伸張中間域の抵抗において、発症後短期の対象が長期の対象に比して有意に高値を示し、膝屈曲位では統計学的有意差を認めなかった。このため筋緊張の中枢性要素としての伸張反射の程度および末梢性要素としての筋伸張中間域の抵抗は、腓腹筋を中心とする2関節筋がヒラメ筋を中心とする単関節筋よりも罹患日数との関連性が強いと示唆された。 本研究によって、脳血管障害発症後の筋緊張が時間経過とともに質的にも量的にも変化することが明らかになった。リハビリテーションでは筋緊張の亢進に対して、幾つかの治療手段がある。本研究で得られた知見をもとに、様々な治療法を、より有効に実施できるものと考える。
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