本年度は主として以下の二項目に関する実験検討を行った。 (1) 光感受性色素およびレーザ光照射モードの検討 本研究では細胞膜を微小酸化させるための手法として光線力学的治療法(PDT)を応用する。本手法によって細胞膜の透過性が亢進し、その結果として細胞内への物質導入が可能となることを示すためには、第一に細胞死を誘導しないレベルのPDT条件の検索が必須となる。ここでは適切なPDT条件を決定するため、光感受性色素の濃度およびレーザ励起光源の(1)照射モード、(2)照射パワー密度、(3)総照射量を変化させ、これらパラメータの変化がHeLa細胞の増殖活性に与える影響を評価した。その結果、光感受性色素Photofrinの接触濃度10μg/ml、照射パワー密度50mW/cm^2、総照射量1~5J/cm^2の範囲の検証において、細胞生存力が80%を下回らない条件を見出すとともに、励起レーザ光として採用した赤色630nmの影響を考察し、Low-Power Laser Therapy(LLLT)様の細胞活性効果の存在を実証した。本成果は現在、海外の光医学専門雑誌に投稿中である。 (2) 抗がん剤ブレオマイシンの細胞傷害効果の増強に及ぼすPDTの影響評価ここでは上記(2)にて検索したPDT条件を適用することで、ブレオマイシンの取り込みに伴い、細胞死の誘導効率が上昇するかどうかを検討した。その結果、ブレオマイシン濃度10μM適用時、Photofrinの接触濃度10μg/ml、照射パワー密度50mW/cm^2、総照射量1J/cm^2にてPDTを実施すると、細胞傷害効果が20%以上高まることが示され、本手法の有効性が明らかとなった。
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