1.光線力学的微小酸化(PDT)による細胞内への導入可能分子量の検討 昨年度見出した細胞死の誘導効率の低いPDT実施条件を適用することで、細胞膜不透過性の蛍光色素として知られている(1)Propidium Iodide(PI:分子量668.39Da)、蛍光分子をラベルした(2)Texas Red Dextran(分子量:10kDa)、および(3)FITC Dextran(分子量:40kDa)のPDTによる細胞内への分子導入が可能かどうかを評価した。蛍光イメージングシステムによる評価の結果、いずれの分子においても細胞内での蛍光を認め、その細胞のViabilityが維持されていることが、Calcein-AMによる染色にて明らかとなった。また、これらの分子の導入効率は、分子量依存的であることがフローサイトメータによる解析結果より示唆された。 2.PDTの併用によるブレオマイシンの細胞内への導入促進効果の検討 上記条件のPDTによって、ブレオマイシン塩酸塩(BLM)の細胞内への導入効果をXTT Viabinity assayによって評価するとともに、細胞傷害効果と脂質酸化量との関係を検討した。脂質酸化量は総照射量が増すにしたがって、増加する傾向が見られ、PDTの細胞傷害効果のそれと一致した。BLM濃度10μM、接触時間8時間以上経過後における細胞のViabilityは8%以上確保されていた。当該濃度においてパワー密度50mW/cm^2、総照射量1J/cm^2のPDTを併用すると、そのViabilityは60%以下に低下した。 PDTとBLMの併用療法は、少量のBLMでも十分な細胞傷害効果が得られることから、BLMの副作用の軽減が期待され、また表在性早期がんに適用されるPDTよりも、著しく低いパワー密度および総照射量の適用で済むことから、PDTを浸潤性のがんに対しても、その適用を拡大できる可能性がある。
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