本研究では運動の抗老化メカニズムを調べるため、ラットを用い、ヒストン修飾に焦点を絞った研究を行っている。(1)加齢に伴い筋肉をはじめとした様々な組織中のヒストン修飾が変化するか、(2)運動によりその変化が影響を受けるか、(3)加齢及び運動によりどの遺伝子上にあるヒストンが変化しているのか、以上の3点を明らかにすることを目的としている。本年度はラットの飼育と運動および筋肉についての解析の一部を行った。 加齢実験群(9と27ヶ月齢)および運動実験群(25.5ヶ月齢の運動群、非運動群)のラット腓腹筋の核から酸抽出によりヒストン画分を調製した。ヒストン修飾体量は部位特異的抗体を使用しウエスタンブロット解析を行った。運動は二ヶ月間(23.5→25.5ヶ月齢)、週4回月、火、木、金に60分間/日のトレッドミル運動を行った。 ヒストンH3の修飾体について解析を行った結果、ヒストンH3全体のアセチル化(部位非特異的抗体使用)は加齢により減少した。また、ヒストンH3の4番目のリシンのジメチル化およびH3の9番目のトリメチル化は加齢により減少した。9、14番目のリシンのアセチル化、10番目のセリンのリン酸化には加齢による有意な変化は見られなかった。これら修飾には運動による影響は見られなかったが、H3の9番目のジメチル化は運動により増加が見られた。ヒストンのメチル化にはモノ、ジ、トリの3段階が存在し、修飾を受けるアミノ酸の位置によって転写活性化(K4、K36、K79など)および抑制(K9、K27など)と複雑な制御を受けていることが知られている。加齢や運動に伴うメチル化の変化は転写に影響を与えている可能性がある。 現在、加齢または運動で発現が変化する遺伝子をmRNAレベルで調べるため定量的RT-PCRの準備およびどの遺伝子上に存在するヒストン修飾が変化しているかを調べるためクロマチンIPと定量的PCRの準備を進めている。
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