研究概要 |
マウスの洞毛を介した感覚は、三叉神経核群を起始核とする内側毛帯線維を介して視床中継細胞に入力する。幼若期には複数本の内側毛帯線維が中継細胞へ入力するが、その後余剰な内側毛帯線維は活動依存的に除去され、生後21日(P21)までに中継細胞は一本の強力な内側毛帯線維に支配されるようになる。我々はこれまでに、一度一本支配が成立した内側毛帯線維が末梢感覚神経(眼窩下神経)の切断によって、あたかも幼若期の表現型に戻ったかのように再多重化する現象を電気生理学的に見出してきた(Takeuchiら,Nerosci.Res.65 s1,S145 2009)。本年度、この再多重化現象が視床内内側毛帯線維の側枝発芽によるか、その配線を電気生理学的に検討した。2から3個の視床中継細胞から同時に全細胞電位固定記録を行い、内側毛帯線維束を興奮性シナプス後電流(内側毛帯EPSCs)が50%程度の成功率で生じる強度で電気刺激して、内側毛帯EPSCsが複数の中継細胞に同期して生じるか検討した。現在データ収集・解析途中で例数が少ないため結論には達していないが、今のところ偽手術群と眼窩下神経切断群で内側毛帯の視床内配線に有意な差は見られていない。また麻酔下のマウスの三叉神経核群洞毛領域に神経トレーサーを電気泳動的に注入し、内側毛帯線維を可視化する実験を次年度に予定しているため、本年度そのための実験セットアップを完了した。現在、洞毛刺激による神経活動を三叉神経核群または視床で記録し、その場所に色素を電気泳動的に注入することに成功している。
|