本研究の目的は、サッカーにおいて試合を有利に進めるために重要な技術となるロングスローイン動作についてバイオメカニクス的に明らかにすることにより、飛距離の向上を目指したスローイン技術の指導法の開発へと繋がる基礎的資料を得ることである。 本年度は、スローインの全身動作の分析からロングスローアーの動作の特徴を抽出することを目的とした研究を行った。大学サッカー選手を対象とし、自由な助走からのスローイン動作について2台のハイスピードカメラ(毎秒250コマ)を用いて分析した結果、スローイン飛距離の大きな選手ほどリリース時のボール速度が大きく、ボール投射角度が小さい傾向にあった。上肢においてはスローイン飛距離の大きな選手と小さな選手の間でボールリリースポイントに顕著な違いが見られ、飛距離の小さな選手が頭部の真上かやや後方でボールをリリースしているのに対し、飛距離の大きな選手は動作終盤までボールを保持し、頭部よりもやや前方でボールをリリースしていた。さらに下肢において助走の勢いを受け止める前足の接地位置にも差が見られ、飛距離の大きな選手ほど前足を体幹よりも大きく前方に踏み出していることが明らかとなった。 ボールリリース位置と前足接地位置は第三者が視覚的にも判断しやすいポイントであり、指導の際に有効な評価項目となり得ると考えられた。本研究結果を踏まえ、次年度に追実験やより上肢の動きに着目した実験等を実施する。
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