本研究の目的は、サッカーにおいて試合を有利に進めるために重要な技術となるロングスローイン動作についてバイオメカニクス的に明らかにすることにより、飛距離の向上を目指したスローイン技術の指導法の開発へと繋がる基礎的資料を得ることである。 前年度の研究結果を踏まえ、本年度は大学サッカー選手を対象としたスローインにおける助走と飛距離の関係を検討する研究と、特にリリース周辺の上肢の動きに着目した研究の2点を実施した。 助走と飛距離の関係を検討する研究では、助走なし、一歩助走、自由助走の3条件からのスローイン動作を3台のハイスピードカメラで撮影し、助走の変化に伴う動作やボール飛距離の変化を検討した。その結果、自由助走での飛距離が小さい選手の約半数が3条件の飛距離にほぼ差がなく、助走速度を活かすことができていなかった。これらの選手では動作前半のテイクバック時の体幹後方傾斜角度が小さく、また体幹の前方傾斜の始まるタイミングが早い傾向が見られた。一方で自由助走での飛距離が25mを超えるロングスローアーは助走なし条件での飛距離も大きく、さらにどの条件においてもテイクバック時の体幹後方傾斜角度が大きく、かつ前方への傾斜が始まるタイミングが遅い傾向があった。 上肢の動きに着目した研究においては、飛距離の大きい選手と小さい選手の間で特に肩関節の動きに違いが見られた。飛距離の小さな選手はリリース時に肩関節の外転方向の動きが大きく肘が側方に出るような姿勢であったが、飛距離の大きな選手はより肩関節の水平屈曲の動きが大きく、脇を締めて肘を前方に出すような姿勢でリリースをしていた。 以上の研究から明らかとなった体幹と肩関節の動きは、ボールに対する投球方向への作用力を増しリリース時のボール速度を増加させることに有効なポイントであると考えられた。
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